NT胎児頚部浮腫 胎児ドック

あなたの赤ちゃんの首にむくみ NT があると言われて、とっても心配しているママから相談を受けます。
 千葉がお医者向けの参考書にNTについて投稿しました。それを判りやすく書き直しました。
 参考になさってください。

 胎児の頚部のむくみ;NTとは何でしょう。

 NT(Nuchal Translucency)とは妊娠初期の胎児の後頭部から後頚部のむくみのことを言います。胎児は循環のバランスが少しずれることに皮下にむくみが生じることがあります。NTも循環のアンバランスによって生じた皮下浮腫と考えてよろしい。
 国によっては、染色体異常のスクリーニングとしてNTを使っている場合がありますから、NTを直接染色体異常と関連付けて話がされる場合があります。
 しかし、わが国の医療のあり方、母体保護法や、医療経済のあり方からすると、NTと染色体異常を直接結びつけることは誤解の原因となります。
 まず、3mm以上のNTがあっても、児になんら疾患が認められない場合が70%あることに注目しましょう。これは、何らかの一過性の循環のアンバランスにより生じた皮下浮腫と考えられます。
 双胎は循環がアンバランスになることが多く、双胎の1児あるいは両児に一過性の頚部浮腫をみることもしばしば経験します。
 臍の緒には2本の動脈と1本の静脈がありますが、動脈が1本の場合、単一臍帯動脈と呼びます。正常に経過し分娩後に初めて単一臍帯動脈わかる場合も多くありますが、ある種の染色体異常にもよくみられるため、染色体異常のスクリーニングにも使われます。しかし、単一臍帯動脈により循環不全をきたし頚部浮腫(NT)が発生することもありますから、両方があるから染色体異常の確率が高いとはいえません。
 NT(胎児後頚部のむくみ)が観察され、その原因となる可能性がある状態を記述しますと;
1) 正常胎児の一過性の循環不全、
2) 心疾患を合併する胎児の循環不全、
3) 染色体異常に伴う心疾患による循環不全、
4) 頚部リンパ管腫、
5) 染色体異常に伴う頚部リンパ管腫、
6) 感染症に伴う一過性の循環不全、
7) 双胎の循環不全、
などが考えられます。
 いずれも胎児病を診断する立場からは重要な事項であるので、NTを見たらさらに詳しく胎児診断を行うことが、正しい結論となります。
 では、NTが観察された場合の医療側の基本的な行動とはまず、
1) 妊娠15~16週で超音波胎児精査を行う。
 この時期に行う理由は、妊娠16~17週で染色体検査を行うかどうかの判断材料を提供ができます。 また重症の心疾患や中枢神経系疾患の診断がこの時期に可能なことが挙げられます。
2) 妊娠16週以後、充分なカウンセリングと羊水検査
 染色体検査の意義、リスク、結果が判明した後の行動決定に至るまでの考え方、など理解が得られた場合、羊水染色体検査を実施します。患者の不安を取り除くことが最も大切です。
3)さらに心疾患などの胎児の精査
 染色体診断が結論を得た後も、さらに妊娠20~25週で胎児心疾患精査も含め胎児の超音波による精査を行います。
 そして、その胎児に最も適した管理方法を検討することが大切です。

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