秋も深まってきましたが、まだ滑れるほど雪は積もっていません。わが家でホソボソとオフピステな生活です。そんなある日、生け垣に黄色スズメバチの巣がある事に気がつきました。知らずに刈り込みなどすると逆襲されかねません。寒くなるまでそーと様子を見る事にしました。 ハチの巣から2mほど離れて観察している時の事です。頭のすぐ横でブーンと羽音とともに、何やら視線を感じました。はっと見ると、一匹の黄色スズメバチの大きな目が私の目の前50cmに空中停止していました。戦闘ヘリコプターがこちらに銃口を向けて空中停止をしているような状態で、動くに動けません。しばらくして戦闘へりは向きを変え飛び去りました。どうもこのとき、複眼のデジタルメモリーに私の姿はきっちりと記憶されたようです。それから数日後、ハチの巣から10m以上離れた水道の蛇口をひねっている時のことです。またブーンと羽音、同じ複眼が50cmのところに空中停止していました。複眼の中に焼き付けられたメモリ画像と照合をされたに相違ありません。複眼は2-3秒は停止していたと思います。こうして私は、要注意危険人物として黄色スズメバチ社会で手配されたようです。
安曇野の旧家に住む青柳君から便りがありました。彼の家にも大きなスズメバチの巣があるそうですが、信州ではハチの子は珍味として重宝され、近所の人がハチの巣を取らしてくれと頼みにくるそうです。そうか、珍味か、でも親バチを追い払うのにはどうするのかな、殺虫剤を使えば、ハチの子は食えないし、青柳君に巣の取り方とハチの子の料理法を聞こうかな、ハチの子はうまいのかな、など考えながら秋の日々を過ごしていました。秋のスズメバチは獰猛で危険との新聞の見出しも目にします。
わが家にシェパードの女の子、花子がやってきて2-3日たった朝の事です。花子と庭で遊んでいました。突然、耳の側でブーンブーンと攻撃音です。手配されている身ですから、思わず飛び退きました。花子に危険が及ぶのも気になります。でもハチの巣からはかなり離れた場所なのにどうして、と振り返るとハチは地上から1mぐらいの高さで空中旋回、次第に旋回の輪を縮めて地上におりて行きました。 そこには、大きな緑色の芋虫が転がっていました。どうやら、黄色スズメバチの狩りの邪魔をしてしまったようです。スズメバチは芋虫の腹から肉片を切り取り丸い固まりにしていました。次第に近づいてくる人影は無視し作業に専念しています。やがて切り取った肉片をかかえて飛び上がりました。かなり重かったのでしょう、ゆっくりと旋回しながら高度をあげて行きます。5mぐらいまで高度を稼ぎ、ハチが巣に向かって水平飛行に移った瞬間、突然ハチの飛行が中断しました。かなり高いところに張られた女郎グモの巣にとらえられたのです。あまりの大きな獲物に女郎グモは呆然と眺めているだけで手が出せません。スズメバチがバタバタと暴れていました。でもしばらくはクルクルと回るだけです。10数秒後やっとの事でスズメバチはクモの巣から離れる事が出来ました。でも離れた瞬間、苦労して丸めた芋虫肉団子を落としてしまいました。さすがのハチの王者も肝を冷やしたのでしょう、一目散に飛び去りました。 2008-10-23